犬日記

役に立つことは書かれていない日記

チョコと私と未知との遭遇

未知との遭遇

子供が出来たと分かった時から出産するまでの間というもの、毎日何を考えて暮らしていたかというと



「私がヒトの親になるなんて〜〜〜〜・・・・・・無理!やっぱり無理!!!」





「ああ・・・努力しても可愛いと思えず虐待でもしてしまったらどうしよう」



ばかりで、およそ幸せな妊婦生活などというものからは遠い日々を送っていました。
おまけになんの天罰かは知りませんが(思い当たる節はいっぱいある)産まれるまさにその瞬間までひどいつわりがずっと続き毎日ゲロゲロゲロンパしていたので、今思えば心も体も結構シビアな状態だったのでしょう、例にあげられてもおかしくない由緒正しいマタニティブルーでした。
そんな私を気遣ってくれる心優しく先人でもある友人たちは「大丈夫、犬がちゃんと飼える人は子どもも育てられるから」とか「産んでしまえばなんとかなるもんよ」などと言って励ましてくれていたのですが、そうはいっても史上最低なデフレスパイラル状態の当時の私は



「そんなこといったって世の中絶対なんてことあり得ないもん! じゃあなにか? 絶対なんて絶対ないわけだからきちんと育てられる保証なんて絶対ないもん!うわ〜ん!」



などと屁理屈こねまくってはネガティブキャンペーンを展開して友人たちを困らせたりしていました。
ええ、ええ、大変めんどくさいやつですよ私という人間は。ごめんなさいね!



そんな身も心もしょぼりんちょな日々を送っていたある日、ふとつわり休みにフガフガ寝ているチョコを眺めているとある興味が沸いてきました。
それは「赤ん坊が家に現れたらチョコはどうするのだろう」という事で、チョコの視点で想像するにある日突然海のものとも山のものともわからない小さな生き物が自分のテリトリーにやって来て、おまけに家族総出でその生き物をちやほやと世話するようになるわけで、今までテリトリー内の人間の愛情を好きなだけ享受してきた者としてどのように思うのか、またそれなりに空気を読む生き物としてどう振る舞うのか、知らないお客さんが入室した時のように吠えるのか、友人の犬が来た時のように興味深そうに匂いを嗅ぐのか、楽しんでもらえるかなと思ってディズニーランドの風船を買って帰った時のように怯えて半径1m以上は近寄らないのか。
そんな突然沸いた疑問に少しだけ、デフレスパイラルな日々が救われたような気がしたのでした。



そしてその興味深いある日は4月のよく晴れた日にやって来たのですが、チョコは1週間ぶりに帰宅した私の姿にひとしきり大喜び、さてこの後どう出るかと夫の人と注意深く観察していたのですが、チョコときたらテリトリー内に生き物が1匹増えたことに全く気付かず、床に敷かれた布団で眠る赤ん坊が視界に入っていないのか、私が持ち帰った荷物にばかり気を取られてフガフガ匂いを嗅ぎ続けていました。
まったく予想していなかったチョコの反応に呆れるのを通り越して脱力してしまったのはいうまでもなく、あれこれ自分で熟考したつもりでも大した事が想像できているわけではないのだなという事に気づかされ、お陰でその後の育児生活ではあんまし考えてもなるようにしかなんねーしと思い悩む事も少なくなりました。



そんなわけで毎日毎日ショルダータックルだの相撲をとれだの私が遊んでいる間は私を見てて!でもおもちゃには触らないで!だのの、こんガキャあわがままもええ加減にせんといわっしゃげるぞ!な要求にも、対策等を考えても無駄だし取り合えず適当に付き合っとくか・・・と受け流しつつなんとかやれているのはチョコのお陰かもしれません。
「そうよ!だからもっと私の事もかまいなさいよ!」とでもいうように、ミニ怪獣との遊びで忙しい時に限ってチョコがまとわりつくのも致し方ないと思いつつ、遊んで撫でて遊んで撫でて撫でて遊んでまた撫でるを繰り返すせわしない日々を送っています。




チョコ写真。
新しい生き物を興味深そうに見つめるチョコ。
帰宅の数時間のち、赤ん坊が目を覚まして泣いたことで初めて「それ」が生きている事に気が付いたようで、びっくり仰天して部屋の隅に逃げていきました。
しばらく遠くから観察した後、怖くないと分かってからは近づいて匂いを嗅ごうとしていたのですが、布団が邪魔して触れないのでヘリに顎を置いて不思議そうに眺めていました。
人間の赤ん坊を見るのは初めてなのでよく理解できないのか「なにこれ? 人? にしては小さいけど」といつまでもじっと見ていました。