マッシュルームの話
こちらに来るずっと以前から、この世にはバカみたいにでっかいマッシュルームが存在するという事は知っていました。
というのも、昔、『美味しんぼ』のどっかの回で出てきたからなのですが、それはそれはそれはそれはそれは美味しい!日本にはほとんど出回ってないけど海外ではでかい方が美味しいというのが常識さ!みたいに描かれていたため、「どら焼きも、イチゴ大福も、草団子も、もみじまんじゅうも(以下略)・・・ない国に行くのか、しょぼりんちょ・・・」と景気の悪い顔を年明けからずっとしていた私ですが、数少ないカナダ移住への景気づけのひとつとして、実は密かに楽しみにしていました。
(日本のスーパーでは鈴カステラくらいのサイズのものしか見た事がないけど、どれぐらい大きいのかなあ?小さいのとは比べ物にならないぐらい美味しいって漫画で描いてあったけど、どんな味なんだろう?・・・あ!食べるとどら焼き味とか!?・・・いや、イチゴ大福味かも)
なんてことを暢気に考えていました。
現物を見るまでは。
正確には、現物を買って2、3日冷蔵してから食べたほうがいいというアドバイスに従い、楽しみに寝かせている間に考えに考え抜いたシンプルにマッシュルーム本来の味を味わえそうなメニュー「マッシュルームのパスタ」を作るべく、いざ冷蔵庫から取り出し軸を取り除こうとしたその時までは。
いざ軸を取ろうとマッシュルームの傘をひっくり返した瞬間、生き物の本能というか、獣の本能というか、体の奥底から警戒レベル5のアラームが最大音量で鳴り響きました。
ひっくり返した傘の裏には、黒に近いゴゲ茶でビロードのようなヒダヒダが規則正しくびっしりと敷き詰められていて、その質感たるや食べられないとか腐ってるかもとかを超越した、「混ぜるなキケン!」的な何かを感じる様相を呈していました。
(・・・・・・落ち着け、落ち着け、素数を数えるんだ・・・2、3、5、7、11、13・・・って数えても解決しないよ!えーと、確か日本に合った小さいマッシュルームの裏も黒くなってたのを見たことはあったはずだから・・・んで、食っても問題なかったし、てことはこれも大丈夫なんだけど・・・大丈夫なんだろうけど・・・・・・・・・なに、このヒダヒダが今にも動きそうな活きのよさは!しかもでかい分ヒダヒダのひとつひとつが4Kテレビの画像の如く鮮明に見えるし、その鮮やかさたるや胞子の一粒単位まで見えてるような錯覚がっ!・・・とか感心してる場合じゃないっての!なんだこの脳の内部がかゆくなるような、じっとしているのが苦痛な感じは!これが最近の若者がよく使う「普通にきもい」ってやつ?・・・・・・うー、触るのをためらってしまう)
みたいな脳内格闘を10分ほどした後、21世紀の大発明スマートフォンで調べてみたら、ヒダが黒くなったのは熟成して美味しくなったからよ食べごろよ☆(超訳)と書かれていたので、心眼で見たら気のせい心眼で見たら気のせいと100回ぐらい唱えてから、えいっと一刀両断にしてやりました。
私は一度脳の感じ方の整理がつけば大抵の事は気にならなくなる性質なので、その後はこのヒダ触るとふかふかして意外といい!とか思いながら、バスバス切り刻んでパスタにして食べました。
肝心の味の方は、確かに小さいものよりコクがあってジューシーでパスタもうまいっちゃうまかったのですが、なんとなく主役の味ではないようなと思ったため、その後は煮込み料理のコク出し用によく使用するようになりました。
そんなわけで、これぞでかいマッシュルームの美味しさだ!みたいなものはまだ発見できていないのですが、適当にINするだけで料理の味に勝手に深みが出るので、便利なきのこだなあと重宝しています。
チョコ写真。
犬の乗り物で家中を暴走し、ところ構わず衝突する(というかして来る)ミニ怪獣を「なんとかしなさいよ!」と抗議するチョコ。
私だってなんとかしてほしいよ。