犬日記

役に立つことは書かれていない日記

はじめてのおつかい

昨年は4回も海外へ連れて行かれたため、長い長い飛行機での拘束時間も、日本語の普及してなさ加減にも、醤油も味噌もない食事にもかなり慣れてきた私は、先週、夫の人が「来週はアメリカに行くことになりそうだ」と突然言った時にもさして驚かず、


「今度はメリケンかあ、何が食べられるのかなあ、肉かなオレンジジュースかなアイスかな、あ、ベーグルもうまいと聞いた」


なんてのんきにアメリカの思いつく限りの食べ物を想像していました。
が、夫の人の二言目を聞いた瞬間、あまりの衝撃に時代感覚というか時空が歪んでしまい、


「そんなっ!インディアンとかに連れ去られたらどうすればええのよ!ってか、ギャングに襲われたら、キングコングとかGODZILLAが追いかけてきたらどうしたらええのよ、あいつ時速480kmは出るんだだからねっ、うわーん!」


と、大混乱。
泣き叫ぶ私に、夫の人は


「大丈夫だよ、ニューヨークは日本人がいっぱいいるから。誰も取って食いやしないよ。というよりキングコングGODZILLAは実在しないから」


なんて適当なことを言ってなだめられ、結局私は36年の人生で初めてとなる一人で高飛びする事に。
なんでも話によると、1日ずれるだけで航空券代が8万から40万に跳ね上がるというではないですか。
夫の人の分は会社が持つのでいいとして、自腹分の私のチケットが1日で32万円の差額が出るなんて、自由価格にもほどがあるんじゃないかと思いつつ、ここは家計のため、武士だって映画で家計簿つけてるんだからと自分に言い聞かせ、泣く泣く1日遅れで出国する事になったのです。

コノヤロゥ、GODZILLAが出た時は覚えてろよ…と思いつつ、プルプル震えながら一昨日出国し、JFK空港からバスで乗り継ぎNY、さらに電車で夫の人の滞在ホテルまで、長い旅でしたが無事昨日たどり着き、日本から空輸したほうじ茶と「梅の香巻」を飲み食いしつつ、こうやって日記を書いております。
しょっちゅう海外へ行かれる方や、外国語に堪能な方からすると私が何に怯えているのか理解しにくいかもしれませんが、なんたって私は今だに「アイアムナンシー」の域から英語力が成長しておらず、且つ今まで出国の手続き等のめんどくさい事を一切夫の人に任せていて、本当の意味で海外へは「連れて行かれている」だけのドナドナ状態だったので、これらをいきなり全て一人で賄うとなるとドナドナ的に、アメリカだろうとサモアだろうと北朝鮮だろうと危険レベルは同じようなものなので、死を覚悟して挑まねばならないのです。
本当に怖かった…。


なにはともあれ、空港や街のあちこちで「なんだまた英語の出来ないジャパニーズか」という顔をされつつも、一生懸命道や駅の場所を教えてくれた人たち、「小銭ねーか?」の質問に「ノーコイン、そーりー」としか返答できない私を見て、こいつじゃ両替も不可能だと察して75セントまけてくれたバスチケット屋のおじさん(バスチケットが$15.75にもかかわらず、$20しか持っていなかった)など、今回も親切な人がたくさんいて助かりました。
おかげさまではじめてのおつかいは大成功。
「イクコの何でも出来るは日本限定だからね」と、海外へ行く度にでかい顔されていた夫の人に、しばらくは反撃出来そうです。


チョコ近況
登山を始めたころから、長く家を空ける気配を感知するようになったチョコは、スーツケースを見るなり行かないでとアピールしているつもりか、トイレにまで着いてくるべったりぶりな上、外出しようとすると悲しそうな目でこっちをじっと見つめます。
わが飼い犬ながら恐ろしい女子力と、畏怖の念を抱かされる瞬間です。